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2005/09/10

寝耳にACCESS

 昨日は驚いた。その続報の続報。

 まずは、各種記事を拾ってみる。最初に概要から。

■ACCESS、PalmSourceを買収(ITMedia)

組み込み向けブラウザ「NetFront」で知られるACCESSは9月9日、Palm OSを開発する米PalmSource株式を100%取得すると正式発表した。潜在株式を考慮した場合の買収総額は約358億円。PalmSourceが持つ優れたユーザーインターフェース技術などを取り込み、携帯電話向けアプリケーションを拡充する。

 嬉しいのは、ACCESSの今回の発表を市場が歓迎したこと。そりゃ、PalmSource社の株価が倍近くにまで跳ね上がった(10ドル→18ドル)のはわかる。でも、そんなPalmSource社を買収したACCESS社の株価が上がった(274万円→281万円)ってことが嬉しい。

■ACCESS株価が上昇(ITMedia)

米PalmSourceの買収をACCESSが発表した9月9日、東京株式市場では同社株価が上昇。一時は前日比13万円高となる287万円を付けた。

 ちなみに、Palm社の株価の変化は微妙。このあたりの微妙なPalm社の立場については、Palmfanの記事を参照のこと。

■ACCESSの米子会社がPalmSource, Incを吸収合併(palmfan)2005.09.10

The Registerでは,PalmSource, IncリリースにあるPalm, Inc CEOのEd Colligan氏のコメントは”明らかに(explicitly)”取引を歓迎していない,と見ています。

 そんなPalmSource社のリリースの原文はこちら。

■ACCESS to Extend Leadership in Mobile Device Software with Acquisition of PalmSource(PalmSource)

全文英語なので、概要を掴むには前述のpalmfan記事に出てる日本語訳抜粋が嬉しい!

 一方、ITMedia以外のIT系ネットニュースの記事を眺めてみると…

■ACCESSが12月に米PalmSourceを完全子会社化--約358億円で全株取得(CNET)

ACCESSは、こうしたPalmSourceが有する技術を取り込み、携帯電話向けアプリケーションの拡充を図る。加えて、China MobileSoftの開発チーム約200名は、ACCESSの中国リソースの強化と、今後のLinuxベースのソフトウエア開発の一端を担っていく。

 キーワードは「PalmOS」「中国」「Linux」ってことらしい。果たして、この組み合わせが、ACCESS社最大のキーワードである「携帯電話」と「ブラウザ」に結びついた時、どんな化学反応が起こるのか?!

 ケータイWatchはさらに踏み込んだ書き方をしている。

■ACCESS、米PalmSourceを買収(ケータイWatch)

ACCESS広報部では、PDA市場が衰退した日本市場では厳しい立場に立たされていたPalmSourceだが、携帯電話向けブラウザ「NetFront」を提供している同社の傘下となることで、「NTTドコモなどのキャリアとも関係が持てるのではないか」としている。現在、国内のスマートフォン市場では、モトローラ製の「FOMA M1000」、ノキア製の「702NK」などでSymbian OSが採用されている。

 PalmSource社のリソースが、「NTTドコモなどのキャリアとも関係が持てる」という言葉をそのまま鵜呑みにするほどお人好しでもないが、是非ともそんな夢を現実にして貰いたいと思わず願ってしまうほどのお調子者ではある。

 とか、その手の記事を読みながら悶々としていたら、ITMediaがフットワークの軽い動きで、見事な取材攻勢を見せ、素晴らしい記事をものにしてくれた。そのまま英訳して、全世界に配信しても良いほどの記事だ。

■ACCESSに聞く「なぜ、Palmを買ったのか」 (ITMedia)

なぜ買収に踏み切ったのか、その理由をACCESSマーケティング本部の大石清恭本部長に聞いた。

本格的にこうした話し合いを始めたのは今年の7月からだ。もともとACCESSとPalmは、3年ぐらい前からPaml OS上で動くACCESSのエンジンをライセンスするなど、ビジネス上の付き合いはあった。こちらから「もっと協業体制を強めたい」と申し入れて、どうせなら1つになってしまえばいいのでは——という話になった。

ACCESSがPalmを買収することで、例えばそれまで1円の価値だったものがとたんに3円になる。これが違う企業が買収したのでは、1円のままだった。2社の力を合わせることで、ものすごいシナジーが生まれるだろうと考えている。

 という訳で、今回の買収劇で、今のところあからさまな不満が顕在化していない事情の背景でもあるのだが、さすがにPalmコミュニティとの付き合いが短くはないACCESS社は、吸収合併という手法をとりながらも終始「Palmコミュニティの価値」を評価し続けている。こういうリスペクトの精神にPalmコミュニティは弱い。正直まだ、明確な未来像、とくに、我々日本人ユーザが今回の買収劇の結果として享受するであろう明確で具体的なプランまでは一切提示されてはいない。

 しかし、今のところACCESS社が貫いているPalmライクな発言のスタンスが、ともすれば不安になりがちな、旧来からのPalmOS愛好者たちに優しく接し、その精神状態を安らかに保ち続けてくれている。その手腕が、このまま続いて、PalmOSに、よりよい未来を運んで来てくれることをひたすら希求する。

 そんな中、ソニ☆モバさんが面白い記事を拾ってきてくれている。

■よみがえる「パーム」、北米でPDA市場拡大(IT+PLUS)

日米で携帯情報端末(PDA)市場が明暗を分けている。ともに低迷が続いていたが、米国では市場が回復の兆しを見せている。電子メールの送受信のほか、インターネットの閲覧や音声通話などに使える多機能機がビジネス需要を掘り起こした。一方、日本では市場縮小が続いている。米PDA大手、パームワンの2005年3─5月期は売上高、純利益ともに前年同期を上回った。

 さっきも紹介したけど、確かにpalmOne社の株価は、今回の買収劇以前に、非常に快調なステップで上昇を続けている。

 なんだか、ずっとどんよりしたニュースばかりが続いてただけに、久しぶりに爽快な晴れ間が覗いたように見える。気のせいか?…いや、気のせいだったとしても、なんだかあまり不満を感じない。そんな今回の買収劇だ。

 最後に、ネット内の大手新聞社系ニュースサイトの記事を2つほど。

■日本のACCESS、米ソフト大手を買収(読売新聞)

■ACCESS、携帯端末OSの米パームソース買収(日経新聞)


P.S.

 ところで、Apple Computer社のiPod NANOが発表され、さらにはiPod機能搭載携帯電話が同社から発表され、ライバル企業であるSONY社を震撼させたばかりだ。そんなタイミングで発表された今回のACCESS社によるPalmSource買収劇。この微妙な歴史的偶然を感じつつ、私は今から7年ほど前の古典的な時代のことを思い出していた。1998年2月〜3月頃。この頃、Palm社(当時は3Com社の子会社で、名前はPalmComputing社)はまさに日の出の勢いだった。1996年春に発売したPILOTが異例のヒット。翌97年に発表したPalmPilotは驚異的な大ヒット製品となり、さらに翌98年春に発表したPalm IIIは奇跡のようなセールス記録をまもなく打ち立てようとしていた。そんな1998年2月の末、当時、極度の低迷を続けていたApple Computer社は、Palmシリーズの成功の影で、その先駆者的製品であるNewtonの開発中止を発表した。1993年、世界に向けて大々的に発表したそのマシンは、世界で初めてPDAの名前を冠した伝説のマシンだったが、その後の歴史は虹色に輝くことを知らなかった。その頃、まさにこの世の春を謳歌していたPalm社の影で、この悲しいニュースはApple Computer社からこっそりと発表された。ところが、その2ヶ月後、Apple Computer社は見事に生まれ変わって我々の前に還ってきた。1998年5月、Apple社は機能よりも美しさと簡便さを究めたパソコンiMacシリーズで復活し、あまりに見事すぎた再生を果たす。なんだか、今回の買収劇、しかも、iPod NANOの眩しすぎる発表を横目に見ながらの買収劇を知って、意味もなく、そんな7年ほど前の古典的なエピソードを思い出してしまった。大いなる希望的観測とともに。あるいは、大いなる幻想とともに。

2005-09-10 | Project Palm 直接リンク

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