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2005/01/06

シンプルな時代に!

 さて、以下の記事タイトルを読んでいたら、今年はPalmOSマシンが再び大ヒットしそうな予感すらしてきた!さて…

■2005 International CES:「デジタル」の課題は「シンプル」――米家電市場(ITmedia)

米国の家電市場は2003、2004年と2年連続で前年比10.7%伸びた(金額ベース)。市場拡大をけん引するのはデジタル機器だ。家電に占めるデジタル製品の割合は年々増え、2004年は57.7%となっている。「成長を持続するためには、シンプル操作で初心者にも扱いやすい商品を開発する必要がある」と、CEAのジェフ・ジョセフ コミュニケーション担当副社長は話す。

 記事のほとんどは、いわゆる家電についての紹介だが、モバイル系の製品についての記述も少ないながらもある。

デジタルカメラやDVカメラは、出荷台数こそ右肩上がりだが低価格化も同時に進んでいるため、金額ベースではそれほど伸びていないのは日本と同様の事情。携帯型音楽プレーヤー市場は2004年、前年比2.3倍の695万台に伸張。「iPodとiTunesが革命を起こした」(ジョセフ副社長)。

 さて、今更ながら強調しておくと、「デジタル」で「シンプル」と言えば、PalmOSマシンこそ、その先輩格にあたる。かつて、PalmOSマシンは、その機能や使いやすさを徹底的にシンプル化することで大ヒットした。しかし今、「デジタル」で「シンプル」な製品群が大ヒットしている中、それほど大ヒットしているとは言えない。とくに日本においては、かなり地味な販売状態にある。なぜか?

 PalmOSマシンは、間違いなく「デジタル」で「シンプル」な製品だが、決して「家電」ではないからだ。そもそも「家電」とは何か?という定義について議論を始めたら、そうそう簡単には終わらないだろうことが予想される。「家で使うこと電化製品」とか「家庭方面で使う電化製品」という定義はたぶん正解だが、別の言い方をすると「家や家庭方面で利用する、利用意図のはっきりした電化製品」であると言える。そういう意味では、実際、利用意図のハッキリしないパソコンのことを「家電」扱いにすることは少ない。

 そういう意味で、このサイトではもうくどいほど強調してきたことだけど、記事中にも登場している「iPodとiTunes」の組み合わせは、キャパシティとして「もっと広範囲な機能性」を強調して発売することも出来たのだが、使用目的を「シンプル」化することで「家電」の仲間入りを果たすことに成功した。

 同じような例は、見事「家電」に成りすますことに成功したHDレコーダと、それに失敗したAV系パソコンの関係にも当てはまる。少なくとも、「家電」になりえたものは成功しており、なりそこねたものはいまだ苦闘している。少なくともHDレコーダとAVパソコンの機能差など、あまりないにもかかわらず、だ。場合によっては、機能面の数量でAVパソコンが勝利している場合もあるはずだ。

 さて、ほぼ同じようなテーマについて書いてから、およそ1年が経過した。

参照●[3826] 【新春コラム】初夢っつーか。(パルマガ)
  ●[3959] さらなる夢を見てみる。(パルマガ)

 今さら1年前のような販売方式を採用してももはや手遅れかもしれない。でも、ひとつだけ言える事がある。音楽プレイヤーを今さらのように作り始めるよりも、CLIEマシンの改造バージョンとして手軽なWindows連携ソフトともに1年前に販売していたら、しかも、CLIEの亜種としてではなくCLIEの新ブランド(あくまで音楽プレイヤーとして!)として無駄なボタンをハードウェア的に隠す機能ぐらいをつけて発売していたらどれぐらいの価格で発売できたんだろうか?とか、AV系のモバイル機器についても同様にCLIEの亜種として発売していたらどれぐらいの価格帯で出せたんだろうか?同様に電子ブックリーダはどれぐらいの価格で?…とか、PSPを除くその他の幻の機器について考えてみると面白い。正直、そんなもうひとつの未来の結末については、今となってはわからない。所詮は「if」の世界だから。

 さて、改めて、上記アプローチとは別に、PDAをあくまでPDAとして販売するなら、その機能性をシンプルに表現すれば「電子手帳」ということになる。今でもPalmOSマシンをPDAとして使っている人の感想を聞くと、たいていこの「電子手帳」という言葉に行き着く。そもそも「電子手帳で十分だったんじゃないか?」「夢を見すぎただけじゃないか?」「少なくとも自分は電子手帳として十分に愛用している」…と。実際、私もその口だ。今でもPalmOSマシンを愛用しており、その使用目的のほとんどは電子手帳として、だ。ところが私はそのことをサイト等では、ことさら強調しないようにしている。もちろんそれには理由がある。

 これまでPDAの歴史を見てきて感じたこと。PDAは確実に「電卓」への道を歩んでいる。だから、まだまだ模索の時期で、たまたま幸せだった最初の数年間を終えると、あとはそれほど進化することよりも、使いやすさと低価格化だけを心がけていけば良い時代がやってくる。現在のPDA分野が直面している現実のひとつはそんな状況だ。

 だから、PDAの忠実なユーザほど、「PDAは電卓のようになればいいじゃないか?」「徹底的な低価格化路線のどこが悪いのか?」と思う。ところが、メーカーはそれを認めたくない。現実はもっと残酷だ。かつて電卓にも人気ブランドがあった。シャープだとかカシオだとか、そういった人気ブランドが存在した。

 しかし、電卓が単なる消耗品のように「徹底的な低価格化路線」を歩み始めると、これら伝統的ブランドじゃなくても、弱小メーカーや発展途上国のメーカーでも参入することが出来るようになった。そして今、百円ショップに置いてもなんら違和感がないほどに低価格化が行き着いた電卓の世界で、いったいどれほどのユーザがそのブランド名にこだわってそれを購入しているだろうか?だからこそメーカーは、いくらユーザが望んだとしても、ある一定ライン以上の低価格化路線を進めたくないのだと私は思う。

 そう、このあたりが、PDAという分野が抱えている現在の葛藤だ。家電と呼ぶには複雑すぎるし、電卓のようになるにはまだまだメーカーにも色気がある!取り扱いの非常に難しいマシンになってしまっている。

 ま、ユーザとしては、少なくとも私の個人的な意見としては、世間がPDAやPalmOSマシンをどう扱おうとも、これまで通りに、便利な便利な電子手帳として、愛用し続けさせてもらうだけだ。このままメーカーが在庫を切らさず、修理方面のサポートを続けてくれるなら、このまま新製品を発売しなくても別に困ったりはしない。でも、このままメーカーがこの分野の旨みを失ってしまうと、在庫やサポート体制にも影響が出る。なので、たまには妙なこともこのサイトなんかに書いちゃう。

 というわけで、PalmOSマシンにかかわるすべての皆さんには頑張って欲しいと思っている。とにもかくにも、頑張ってね!

2005-01-06 | Project Palm 直接リンク

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